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迦葉の想い

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世代を越えて 想いを繋いでまいります。

―  交通遺児の男の子  ―
 ある時、大磯の孤児収容施設『エリザベスサンダースホーム』に、4歳の男の子が、近所の人の手に引かれてやってきました。両親が交通事故で同時に亡くなり、他に身内もない天涯孤独の身で、当初は近所の方々が面倒を見ていましたが、いつまでもという訳にもいかず、ホームに入園して生活やら、学習やらという園の暮らしが始まりました。
ホームでは、普通の家庭の子ども達と同じような気持ちで全てに接しなければいけないということで、1年のうち、夏と暮れには予算の関係で、僅かですがおこずかいを渡します。子ども達は町に出ておもちゃ屋さんで、プラモデルやお人形を買って帰って皆で楽しく過ごすのです。

―  お金を貯めて買いたいもの  ―
 ところがその4歳の男の子は、
「先生、僕おこずかい使いたくないから貯めておいて」と言って受け取ろうとしません。
それが 2年、3年と続いていきます。
「どうしておもちゃ買わないの?今日は先生と一緒に行って好きなもの買いましょう」
と言うと、
「いいえ、先生、貯めておいて。僕、そのうちに買いたいものがあるの」
「何を買いたいの?」と聞くと、
「僕、お金貯めてお父さんとお母さんを買うんだよ」
両親を売っているはずがありません。しかしその子は、まだ子どもですから、プラモデルなどもほしいでしょうに、黙って友達のを見ているだけで、そして4年目の夏が来ました。

―  2つのお位牌  ―
「先生、今度ね僕、お父さんとお母さんを買いに行くの。だから今まで貯めてあったお金みんな頂戴」
といって。その子は、1万7千円少々になっていたお金を貰って喜び勇んで町に行きました。
職員室の先生方は不思議でした。
「両親を買う?一体何を買ってくるんだろう」
30分ほどして坊やは胸に包みを抱えて勢いよく帰ってきました。
「先生、買ってきたよ」
と言って、包装紙を解くと、中から出てきたものは、
黒い漆塗りの2つのお位牌でした。
もちろん裏にも表にも、戒名も亡くなった日にちも何も書いてありません。
「これがお父さん、こっちがお母さんだ。うれしいな」と言います。

―  おばあちゃんが教えてくれたこと  ―
「先生、僕、知ってるんだ。お父さんとお母さん、一緒に死んじゃった。僕が近所のお家に遊びに行ったら、そこのおばあちゃんが一人でいて、
『坊や、悲しいだろう、淋しいだろう、おばあちゃんもおじいちゃんに死なれてとっても悲しかったよ、淋しかったよ。でもね、今はおじいちゃんがここにいるから大丈夫なの』って言うんだ」
と、指差したのが仏壇の中のお位牌でした。
「おばあちゃん、少しも淋しくないのよ。うれしいこと、悲しいこと、何でもおじいちゃんにお話しするの。おじいちゃん黙って聞いてくれるのよ。だからおばあちゃん、今は悲しくも淋しくもないのよ」 それが子ども心に焼き付いていたのです。さあ、坊やは二つのお位牌を胸に抱いて、職員室の中を小躍りして所狭しと飛び跳ねるのです。
「ああ、よかった。お父さん、お母さんが買えた。」
(御寺院様ご提供による実話です)

代表取締役 鈴木陽一郎